ふぐのひれ酒の妙味

昨日は、懐かしい友人が遠方から訪ねてきたので一緒に夜中まで会食をしました。ちょうど寒くなってきたこともあり、ふぐのひれ酒を用意して飲みました。炭で温めて飲む熱燗だけでも贅沢ですが、そこにふぐのひれ酒が入るとお酒が止まらなくなるものです。

このひれ酒は、歴史を調べると意外とまだ新しいことがわかります。戦後の物資が乏しい時代に、美味しいお酒を飲むための工夫から発明されたものです。

詳しく言うと、昭和24年に酒税法改正で製造開始された新しい日本酒、正式名「三倍増醸清酒」というものが誕生します。これは日本酒の供給量を増やすために考えられた新しい製造法でした。戦時中は、食料米自体が足りませんからとてもお酒にはまわせません。そこで政府は日本酒へのアルコール添加を認め、日本酒を食用アルコールで水増しするという方法をとりました。しかししかし食用アルコールだけを添加した日本酒は辛くてとても飲みづらかったといいます。

なのでそこに糖類やグルタミン酸ナトリウムを加え、甘味料と人工的な旨味を調整し飲みやすく仕上げたものが三倍増醸清酒、つまり三増酒でした。この名の通り、アルコールと糖類と添加物で3倍量の日本酒をつくったのです。

密造酒や無許可で造られた酒との違いは、工業用アルコールや燃料用アルコールを使用していないことです。たまにロシアとかではニュースででますが、人体に甚大な悪影響がある危ないお酒です。三増酒は二日酔いが酷く悪酔いし甘ったるいなど、不平もあったようです。この三増酒は現在は、2006年の酒税法改正からは飲まれなくなっていますが戦前戦後はこれをどうにか美味しく飲めないかということで「ひれ酒」が発明されたのです。

ひれ酒はちょうどよく温まった日本酒の中に、少し炙ったふぐのひれを入れたものです。よく店舗では、最期に最後に火をつけてアルコール分を飛ばして蓋し差し出されます。ひれ酒の中でも最も美味しいとされているのがとらふぐのひれといいます。

先人の工夫の御蔭で美味しいお酒として飲める、ないなかでもあるものをうまく活かして楽しむのは素晴らしいように思います。もともとお酒は目出度いものであり、心を澄ましととのえる百薬の長とも呼ばれるものです。

飲み過ぎは注意ですが、このふぐのひれ酒の御蔭で食事の楽しみが増えるのは仕合せです。智慧を活かして伝承していきたいと思います。

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