ここ数日、禅僧と一緒に過ごして読経をしたり座禅をしながら過ごしています。その中で、偈文という言葉が出てきます。この偈は、辞書を引くと「経文で,仏徳をたたえ,または教理を説く詩。多く四句からなる。「諸行無常,是生滅法,生滅滅已,寂滅為楽」の類。偈頌げじゆ。伽陀。頌文。」と記されます。
お経を詠んでいると、そのリズムに自然に言葉が出て体も呼吸もととのっていきます。また大勢で一緒に詠んでいると、その共鳴や声の倍音で心身が調和していきます。木魚やおりんを使って、導師がご指導していただくなかで気持ちを合わせるのは心地よいものです。
また法螺貝を立てるときにも、同じように偈文があります。法螺貝にはどのような意味があり、何のために立てるのかを詠みあげていくのです。
我今吹大法螺響 がこんすいだいほうらしょう
遍至三千大千界 へんじさんぜんだいせんかい
經耳衆生滅重罪 きょうにしゅじょうめつじゅうざい
悉階得入阿字門 しっかいとくにゅうあじもん
石鎚立螺法手引にはこうあります。「我が身は不動明王にして、今吹き鳴らす法螺の音は、遠く大宇宙の彼方まで響き渡るものなり。この音を聞きたる衆生の罪障は、即座に消滅し神仏の厚き加護を受けるものなり」
法螺貝の吹き口を三回ほど、叩いた後にこう詠みます。
三昧法螺聲 さんまいほうらしょう
一乗妙法説 いちじょうみょうほうせつ
経耳滅煩悩 きょうにめつぼんのう
當入阿字門 とうにゅうあじもん
これは、「法螺の音は、あまねく平等に法界に充ちていく。この法螺は法華経を説法する声そのものであり、一切衆生の迷いを覚まし、そして諸罪を消滅させる、まさに大日如来の悟りの境地に入るものなり」
初心や理念をまず最初に心得、そして法螺貝を立てます。その功徳があると念じて、取り組むなかでその意識が音に乗り移っていくのです。
偈文を何度も繰り返し繰り返し続けていくなかで、不思議な力が宿るとも言えます。子どもたちにもその意味や価値、そして本質を伝承していきたいと思います。