よい場というのは時間をかけて醸成していくものです。場づくりというのは、そこにどれだけの心で正対してきたかという思いの集積があります。澄んだ心で接してきたなら、その場は澄み切っていきます。逆に澱んだ心でその場にいけば澱んだ場ができてきます。場を調えるとは、お掃除やお手入れ、また配置や布置を丁寧に直し、ありとあらゆるいのちを感じて感謝していくなかで実践していくものです。
長い時間をかけて取り組めば取り組むほど、場は揺らぎません。場が揺らがなくなると、自分もまた揺らぎにくくなっていきます。その理由は、場が応援してくださっていくからです。場が応援するというのは、場が変化し場が主人を助けようとするからです。
これは家でも同じです。家というものを、一つの生命体と思いいつも気をかけてお手入れを続けていくと家が落ち着いてきます。これは家がその家族と一体になっていくからです。これは家でなくても部屋でもできます。部屋を調えるのは先ほどのいのちへの感謝と同じです。まずは、いのちを感じているかということが重要です。
私たちは無機質な物質であっても、まるで生きているものとして接することができます。そうすることで、不思議ですが無機質な物質が物質ではなくなり生きている存在のように変化していきます。これは場づくりの基本です。そして感謝をすることで、また丁寧にお手入れをすることで関係が結ばれていきます。
お互いに思いやり結んだものを大切にお手入れしていけば居心地がよくなります。居心地のよさは、お互いの思いやりや感謝が循環しているということです。これを徳ともいい、私たちは暮らしの中でその徳を磨いて自他や子孫の仕合せを生きてきました。その道具たちは、今でもたくさん遺っています。
私の身近には、大切にされてきた道具たちがたくさんあります。その道具を、また丁寧に磨き直し、持ち味を活かし、新しいお役目を共に喜び合います。その時、場が一斉に喜び、応援してくれるのです。
いのちは、新たな役割があればそれを受け容れ燦然と輝きます。すべては全体快適であり、自然や宇宙は役割交代や役割循環を楽しんでいるかのようです。
季節は廻り、秋になります。秋は秋の美しさ、喜びがあり、先人たちは深く秋を愛しました。秋の場を、調えていきたいと思います。