秋の七草の一つにススキがあります。七草は、姫部志、女郎花(オミナエシ)、尾花(ススキ)、桔梗(キキョウ)、瞿麦、撫子(ナデシコ)、藤袴(フジバカマ)、葛花(クズ)、萩(ハギ)です。
特にススキは、この時期は日本全国どこでも見つけることができます。お月見で活躍しますが、古民家では茅葺屋根などでも使われます。もともと茅葺のカヤという植物があるのではなく、ススキ・ヨシ・チガヤのことを総称してカヤといいます。
ススキに似た植物に、荻(オギ)があります。これはススキは乾燥地帯に生えますが、このオギは湿地帯に生えています。微妙に似ているのですが、ススキは株があってオギは湿地のなかで広がりますので生え方も異なります。ヨシも湿地帯です。チガヤなどは、世界最強の雑草ともいわれ繁茂していきます。
これらの植物は、みんな偉大な生命力を持っています。何千年も前から生き残り、いくら刈ってもまた甦生して繁茂します。私たちの先祖は、自然を壊さないようにしながらその自然からいただけるものを選んで暮らしの中に取り入れてきました。
もしもこれらのカヤが簡単に失われるような弱い生命力のものなら、それを敢えて使おうとはしなかったはずです。他にも竹などもですが、先人たちは自然に影響が出ないように配慮しながら暮らしを持続してきたのです。
そしてその生命力に肖り、その生命力を尊敬し真似していこうと生活の中で取り込んできました。自然をどう取り込んでいくかで、私たちは自然の持つ智慧を吸収して一緒に生き残ってきたのです。
現代では生き残っていくというのは、競争社会のなかでレールから外れないようにしていくことのようになっていますがむかしは自然界と同じように地球と共に生きて共に暮らしていくことができることをいいました。
植物たちがもつ四季折々の生き方や生命力は、私たち人間の模範の一つでもあります。風情を楽しみながら、一緒に生きてきたことを思い出し、その徳を共に伝承していきたいと思います。