お水の味というものがあります。お水は場所場所で味がまったく異なるものです。私が居る場所や古民家はほとんど井戸水を使います。そしてよくおもてなしに料理をします。その料理は、その場所のお水によってまったく味が変わってきます。特に、シンプルな料理ほどお水の影響を大きく受けます。
例えば、湯豆腐などは特徴的でお水がどうかで味が決まります。他にもお蕎麦やソーメンをはじめお水でつくる料理はお水をより感じるようにできています。お茶なども同様に、同じ器で同じ材料でもお水が変わればお茶の味の変わります。これも色々な場所に移動して同じことをするからこそその味の違いが大きく感じるようになるのです。
他にはお風呂などもまったく感覚が異なります。これは鉱物が入っているかどうかだけではなく、その場所から湧いたお水の何かが大きく差があるということでしょう。特に山の中から湧いた井戸のお水、また川の傍、地下深いところ、石炭の間を通ってきた水、田んぼの傍、全部別の味です。
そしてお水は、その出てくる温度や個性もはっきりあります。にじみ出てくるようなお水もあれば、大量に滝のように流れ出てくるものもあります。また大雨の時や、春先の乾季のときのお水も違います。日々に変化して已まず、そしてそれぞれの状態での個性を持つお水は一期一会の味です。
この一期一会の味に気付けるかどうかは、その人の生き方や感覚が左右するように思います。私たちは日々に空気中からもお水を纏い、呼吸からもお水をいただき循環します。そしてお水はいのちすべてを包み込みその中の一部として私たちの暮らしがあります。
そのお水を感じるということが、如何に大切なことか。それが感謝を自覚するということになっていくように思います。お水はまさに観音様の化身です。お水に接する時、どのような心持で接するか。改めて当たり前ではない、大切な存在からいのちを学び直していきたいと思います。