アーユルヴェーダを体験する機会のなかで色々と新たな発見がありました。もともとこの古代医療の技術は、宇宙創生の歴史と深い関係があることもわかります。地球がどのように生成してきたか、そしてそのあとの生物たちがどのように誕生したか、そういう元素や根元から見つめてきたものです。
長い歳月をかけて、それぞれの場所と人の間で伝承されてきたのが伝統医療です。それを結集して一つの形式に纏めたものがこの古代医療の集大成、アーユルヴェーダということでしょう。アーユルヴェーダはサンスクリット語で生命と学問という言葉の組み合わせでできたといわれますが実際の翻訳と、現地で感じる意味が異なっていました。つまり古代医療は、長寿と天命、健康と徳積によって幸福が得られるというこの世のいのちそのものの存在の根源に結ばれているように私は感じました。
もともとスリランカの挨拶も長寿を祈るものです。長寿とは、単なる長生きのことではなく天寿を全うするということです。天寿を全うするために私たちはどうあることが最も智慧であるか。そこに徳を積むことが重要になってくるのです。豊かさや仕合せ、そしていのちの喜びは人間らしさや人間性の根源に基づくものです。
アーユルヴェーダでは、いのちの正体、それを元素といいます。つまり今、この世に物質化されているものは何で構成されているのか。それをよりよく深く観察すると、元素が分かれるところからはじまります。その元素を5つにわけたのが、五大元素といいます。「地」「水」「火」「風」「空」です。中国では五行というものが出て、「木」「火」「土」「金」「水」となっています。最近では、このほかにも意識やエーテルというものもあるといわれます。どちらにしても、人間が誰でも認識できる要素、元素がこの5つからとしたのでしょう。
その元素のバランスを観て、それを調えることを医療としました。そしてアーユルヴェーダでは、この五大元素を調えるために法螺貝を使うことも知りました。医学、薬学の神「ダンヴァンタリ(Dhanvantari)は、4本のての一つに法螺貝を持ちます。宇宙創世の歴史のはじまりから法螺貝を医療に用いるのです。
このダンヴァンタリは創始神話の人物です。世界が荒廃して滅亡するとき、すべてのいのちの神々も精霊も悪魔もみんなが一つに協力し合って不死の霊薬(アムリタ)を生み出し救ったという話です。その最後に生まれ出たのがダンヴァンタリでありこの霊薬が入った壺です。
日本では馴染深い存在に薬師如来がいますが、これもダンヴァンタリが伝来したものといわれます。チベットなどでもとても重要な神様となっています。この神様の持つ壺の中が不死の霊薬アムリタですが、霊薬アムリタは、日本では甘露、あるいは醍醐とも訳します。仏教ではこの涅槃、悟りをアムリタ(甘露・醍醐)ともいいます。大般涅槃経巻第14には、「牛より乳を出し、乳より酪を出し、酪より生酥を出し、生酥より熟酥を出し、熟酥より醍醐を出す。」とあります。修行し中道を悟り不死を得るということでしょう。
この永遠ともいえる不死を私は経験から徳と現代では訳します。つまり薬壺は、徳壺なのです。徳が循環するというのは、いのちが輪廻するともいえます。
今回のスリランカ訪問で色々な氣づきをいただきました。ルーツはこの場所にしっかりと宿り、今でも我々現代人に何が最も大切な悟りであるか、そしてどう実践することが古代からの伝承なのかを直観できます。
今回の遊行の旅が、これからの子孫たちの真の幸福につながっていくようにこれから歩いていく道のりの中で一つ一つカタチにしていきたいと思います。
ありがとうございます。