薬の道

英彦山守静坊の敷地内に薬草園をこれからつくりこみます。もともと霊峰のお山の力を存分に吸収した薬草はとても偉大な力を持っています。霊峰伊吹山なども有名です。

そもそも薬草というのは、植物のことです。雑草などというものはこの世にはなく、全ての草にはすべての徳が具わっています。そしてその徳の中でも人間にとても相性の善いものと、他の生き物に相性がいいものがあります。あらゆる植物は、生命の相互循環を助け、この世に健やかにいのちを伸ばし生き延びることを助けます。

私たちは誕生以来、永遠にあらゆる植物に支えられてこの世でいのちを全うしているのです。

その中で特に人間と相性がよい植物に「蓬(よもぎ)」があります。今回の英彦山の薬草園でもはじめはこの蓬からはじめます。蓬は蓬莱山という仙人のすむ仙境から名づけられたものとも言われます。まさに不老不死の仙薬がある霊峰英彦山にはぴったりの植物です。

この蓬(よもぎ)の語源は調べると萬葉集に所収される大友家持の長歌に「余母疑」とあり蓬が和名だということはわかります。和名類聚抄にはよもぎは「蓬」の文字をあてられています。倭名抄には、「蓬、一名蓽、艾也。與毛木」とあり、本草和名には「艾葉、一名醫草、與毛岐」ともあります。よもぎという呼び名は、私たちの先祖が大切にしてきた大和言葉ということになります。このよもぎという響きはどこから来たのか、これは黄泉(よも)の植物という意味もあるともいわれます。古代アイヌ語ではヨモギを 「カムイノヤ」(神の草)とも呼び、沖縄の古い言葉では、「病気」や「薬」を意味する「フーチ」と、「葉」を意味する「バー」を合わせた言葉でフーチバー(薬草)という名を持っています。

それだけ古代より、悠久の歳月薬として人間と共に歩んできました。

また蓬の学名は「アルテミシア(Artemisia)」といいます。これは古代ギリシャ神話の狩猟と月の女神「アルテミス」が由来です。アルテミスは山野の守護神ともされたところから山野を守る植物として大切にされてきました。

守静坊のある龍谷は、大地と月の女神、瀬織津姫、弁財天の守護する場所です。そして月に深い関係がある女神の力が満ちています。そのお山の神域を守護する願いをこめて蓬とこれから共に歩み古代から続く薬の道を伝承していきます。

古代から続く叡智や真心は、生死の間にあり黄泉がえりの中にあります。

宿坊に遺る薬研や不老園、そしてその場所の気配から本草學を学び直し本来の自然療法や免疫を高め長寿と幸福と健康を祈る場として磨き上げて後人に繋いでいきたいと思います。

いよいよ覚悟を定め、お山での植物と循環の修行に入ります。

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