昨日、ある方から「千里同風」と書かれたろうけつ染めの軸をいただく機会がありました。この千里同風は、はじめて観ましたがよく禅語で使われているものです。その時は、君子千里同風ともいうそうです。これはそのまま読むと「千里離れた遠い地域にも同じ風が吹いている」という意味です。ただ禅では、同じ心でいることや結ばれていることなどを示すといわれています。
また中国には、千里同風と似た言葉で万里同風というものがあります。これはどちらも世の中が平穏に治まっているという意味ですが、万里の方がより広く厚く平穏に治まるという意味です。
そもそもこの同風の「風」とは、風俗・教化を意味します。つまりよく天下が統一されて平和に治ままればはるか遠くまで風俗・文化が同じになっていくということです。つまり「場」において、同じように治まるということです。
場所が離れていても、よくよく場を磨き治めていけばその地域の風土・文化はさらによりよく醸成されていくということです。
この同風というのは、場は異なれど同じように徳の教えが伝道されていますよ、あるいは伝統文化が伝承されていますよという意味でしょう。
同じ志を生きていれば、どこにいても同じように感じ、同じように苦労し、同じように自己を磨いている。変わるものがあっても、同質ものは変わることはありませんという意味にもなるのでしょう。
そこからどんなことがあっても、風は変わることはないとも読めます。風はいつも同じ風、つまり風を感じるままでいるということです。
文字は、その人の心の在り方やもち方でどのようにでも解釈できます。禅語が美しいのは、文字を自然にあるがままに感得するからかもしれません。日本には美しい風景や風土、そして風俗があります。
私なりの千里同風の妙味を深めていきたいと思います。