現在、英彦山の守静坊の薬草園をつくるために色々と畑づくりをしています。腐葉土はたくさんありますが、鹿やイノシシなどの動物の対策が必要です。特に、鹿の数は増え続けていて当たり前に朝晩は庭に来ては私が育てている植物を食べていきます。全部丸ごとではないですが、お茶の葉や山椒の葉なども新芽はほとんど食べていきます。むかしはここまで個体が増えていなかったことからそんなに獣害もなかったように思います。
人が住まなくなり、都会的なライフスタイルが当たり前になり山での伝統的な暮らしが消失すればかつての人も自然のリズムや循環と一体になった場もなくなります。
かつて里山といって、私たち日本人は自然と共生して循環するなかで場をつくりあげていきました。そこでは、お互いが許され合う関係の中で調和して慎ましく助け合い暮らしてきました。
人間中心の貨幣経済や都市化の価値観は、あっという間に日本人のそれまでの暮らし方や心の在り方も変化させていきました。植物や鉱物に支えられてきた暮らしや、天地の廻りと調和して自然のリズムの豊かさを味わう暮らしはほとんどもうありません。
私は暮らしフルネスというものを提唱して実践していますが、自然と共生する暮らしはまさに足るを知る暮らしであり真の豊かさを教えてくれるものです。
人間は暮らしが消失すると、心も同時に消失していきます。
それを人は「忙しい」といいます。忙しい人は、ほとんど暮らしはできていません。今の時代の暮らしは、仕事の中に少しだけ暮らしを味わうことをしようとします。それもその暮らしをお金で買おうとします。タイムイズマネー、コスパやタイパが悪いことをしなくなっているほどです。
しかし、本来は暮らしはお金で買うものではありません。お洒落な台所用品や、見た目がエコでスローな工芸品を揃えて飾ることでもありません。お山であれば、倒木を片付け、その倒木を再利用したり生活の中で燃料として活用したりと杜を調えて水を守るのです。
つまり暮らしには、常に自然との共生や循環が宿っておりその中で自分もその自然の一部になって一緒一体に歩んでいくとき、私たちは心を守っていることになります。お山や里山には、日本人の心が宿っているといっても過言ではありません。
現代の世の中とは逆行しているような活動をしていますが、丁寧な暮らしを実践していくことは何よりも自分の喜びでもあります。忙しくしないように、忙しくならないように、暮らしフルネスに取り組んでいきたいと思います。