孝行の徳

「孝は百行の本」という諺があります。これは日本の昔からある諺ですが、全ての善行の根本は全て親孝行にあるという意味です。

他にも似ている言葉に、「孝悌は仁を為すの本、孝は百行の人の恒徳となす、孝は万善の本、孝は道の美にして百行の本なり」があります。

どんなに正しいことを言おうが示そうが、親孝行の真心を自覚せずに真に善いことはできないということでしょう。中江藤樹に「父母の恩徳は天よりも高く、海よりも深し」があります。これも全ての根本に「孝」があり、その孝行を自らが目覚めることではじめて思いやりや真心の意味を知るということなのでしょう。

今の自分があるのは偉大な無償の愛によって存在できているとも言えます。

今の自分が生きてこの世に存在できているのは、まず両親が自分を産んでいただいたからです。その両親はその先の両親が産んでくださってと遡れば、いのちをつなぎつむいでくださった方々の愛を感じます。そして今の自分があることを思えば、様々な困難や艱難を乗り越えて周りの方々が偉大な恩徳を与えてくださった御蔭様で今の自分が在るのを知ります。

そしてそこに至る入口はこの親孝行のところに存在することに気づきます。

よく考えてみると、人間は生まれてからすぐには一人では何もできません。両親に育てて見守ってくださる時期があり大人になり社會に出ます。その後も、陰ひなたから見守り心配してくださっています。これはまるで先祖や祖神様の真心と同じで、子子孫孫の私たちのことをずっと見守り愛してくださっています。

私たちはその愛の中で、信じるということを学び、そして感謝と報恩を実践していくようになります。そして感謝報恩を実践するとき、それは孝を自覚するに至ります。

与えていただいているものに対する感謝の心に対し、自分もその真心と一体になることを孝行と言います。自分の存在が偉大な見守りによってあることを知り、偉大な見守りを自分も実践していこうとする心、その本は「孝」にあるということです。

吉田松陰の辞世の句に「親思う心にまさる親心けふのおとずれ何ときくらん」があります。親の気持ちは親になってはじめて気づくものかもしれません。その何に気づくかは「孝」に気づくということです。「祖父母との思い出は家族の智慧である」という言葉も残っています。

どれだけ自分のことを大切に思ってくださっている周りがあるか深く反省し、自分勝手に我儘ばかりを言うのをやめ「孝行の実践」に精進していきたいと思います。子どもとの思い出は次世代の真心につながっています。感謝報恩、孝行していきたいと思います。

  1. コメント

    うちの母はあまり旅行を好みません。ただ先日母の実家へ一緒に行った時、和やかに過ごしていました。それは昔から変わりませんが、知らないところへ行くことよりも実家に帰り祖母の顔を見ることが何より幸せなことなのかもしれません。農家ということもあり、祖母もあまり旅行をしてこなかったように思います。直接聞いたことはありませんが、足腰が悪く外へ連れて行ってあげられなかった思いもあって、母もあまり好まないのかもしれません。無理して何かするよりも、実家に帰り顔を見せ、一緒にご飯を食べる。些細なことですがそんな時間を大事にしていきたいと思います。

  2. コメント

    日本には、「家制度」とともに「孝の思想」がありました。しかし、戦後、日本的な「親子という縦の流れ」が切られ、欧米型の「夫婦という横の流れ」が優先されるようになったといいます。また、昔の親は「師」でもあったため、「親子」の間には「師弟関係」の「礼の思想」も「敬の思想」もありましたが、高学歴化や職業選択の自由からか、それらは随分と薄れてしまいました。やはり、いま一度、この国の始まりから、祖先と子孫、祖父母や親と子、孫という「縦のいのちの流れの関係」を見直す価値観の再確立が必要なのではないでしょうか。

  3. コメント

    一円対話の席順テーマに設けてみた「内弁慶順」。難しいテーマではありましたが、過去の自分と今の自分の違いや、親になったことでまた自分の親への感覚も少し変わったことを感じました。親から見守られていることも勿論ですが、子からもまた見守られて今があるのだということを忘れないようにしたいと思います。

  4. コメント

    親の気持ちになってみたら、そんな事出来るだろうか。そうやって考えることすら、父が亡くなるまでは考えたこともありませんでした。最後に発したありがとうと言う言葉は今も自分の中で生き続けています。きっと最後の最後まで、ありがとうの意味を深めていく人生なのかもしれません。不自覚な息子ですが、せめて親には心配をかけない生き方を見せ続けたいと思います。日々の親とのやりとりも、少し単調になっていた時でした。気付かせて頂いてありがとうございます。

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