恩の循環

「恩」という字があります。恩は自分が誰かや何かから受けた恵みのことです。よくこのご恩は忘れませんという言葉や、いのちの恩人というような使い方をします。この恩は、御蔭様の気持ちを忘れない心のことでありいつも自分がいただいている偉大な恩恵を忘れずに過ごしていることを実感し続ける謙虚な心でもあります。

ドイツの詩人ゲーテに「忘恩は一種の弱点である。有能な人で忘恩だったというのを、私はまだ見たことがない。」があります。自分の力でと勘違いすることほど弱点であり、恩を忘れない謙虚な人は皆それぞれに強みを活かすことができるのは周りの御蔭に気づいているからかもしれません。

そしてこの「恩」という字を、致知出版社の藤尾社長はこのように解釈しています。

『「恩」という字は「口」と「大」と「心」から成っている。「口」は環境、「大」は人が手足を伸ばしている姿。何のおかげでこのようにして手足を伸ばしておられるか、と思う心が【恩を知る】ということである』

自分が伸び伸びと日々に暮らしていけるのは、その蔭に本当に多くの方々の見守りがあるからです。両親をはじめ、先祖の方々、今まで自分を育ててくださり自分を助けてくださった本当に多くの方々がいることで今の自分が存在します。あの出会いもあの気づきも、あの言葉もあの親切も、もしくはあの厳しさもあの悲しさも、すべては今の自分をつくってくださった御蔭様の一つです。

恩を知るというのは御蔭様を知る心であり、御蔭様をいただいてばかりだからこそ何か自分も同じように恩返しができないかと感謝の気持ちに満たされるとき「恩」の意味を自覚できるように思います。しかし恩はその人にお返しすることはできず、その人もまた他の人の御縁によって恩をいただきそれを他の人に送っているわけですから同じように恩送りをして人と人の間で恩を循環していくしかありません。

そしてこの恩の循環のことを繁栄というように私は思います。

社會を発展させ繁栄させていくというのは、人類が倖せになっていくということです。そして人類の幸福を願うなら、この恩の循環を通して社會を繁栄させていくしかありません。その社會の繁栄は、自分の日々の生き方次第で行われますから日々の恩送りの実践こそがより善い社會を育てていきます。

その実践とは、受けた恩よりも少しでも多くを他の人の送ることです。ペイフォーワードという映画もありましたが、これは社會を育てていく最善の方法のように感じた記憶があります。

受けた恩や恵みを自分のものだけにせず、誰かに一つ多めに付け足して送っていくことが豊かさを約束し皆を仕合わせにしていく自然の摂理です。恩の循環を忘れないように御蔭様の心を実践していきたいと思います。

 

  1. コメント

    してもらって嬉しかったことは、誰かにしてあげましょう。小学校などでもよく言われることですが、ほんの些細なことでも自分が嬉しいと感じたことは誰かにまた伝えたいと思います。嫌なことはいつまでも覚えていますが、嬉しいと思ったことも回を重ねると当たり前になり、そのことを忘れてしまっています。大きなことでドンっとしようとせず、日々の中で恩贈りをしていけたらと思います。

  2. コメント

    「お元気ですか?」「おかげさまで」、「がんばってますね」「おかげさまで」という会話が、昔はたくさんありました。これは「誰のおかげか」ということを特定しない表現です。それは、特定できない多くの方々のおかげだという認識と同時に、自分が気がつかない方のおかげで今があるかもしれないという思いからでしょう。気がつかない間に、気がつかないところから見守られているかもしれない、祈ってもらっているかもしれない。それは、想像以上に多いことでしょう。その分も、しっかり報恩できる日々でありたいと思います。

  3. コメント

    以前、ある人の善い行いに気づいて素敵なところだと思ったら、実はその人もまた別の人の素敵な行いを真似ていた、ということがありました。善いところや長所というものも知らずのうちに誰かからいただいたもので循環していくもののように感じます。自分のものなどと思わず、自分のものだけにせず、いただいた善いところを周囲の為に活かしていける自分でありたいと思います。

  4. コメント

    以前、「先祖の力を自分の代で食いつぶそうとしていないか?」
    とお声を頂いてから、人生において初めて、感謝についての学びと実践がスタートしました。頂いた見守りやご恩は、先代にも返せず、亡くなってしまえば親にも返すことは出来ません。また、生きていようとも、結局はその人だけにご恩を返してしまっていては、大きな地球の生命循環に背いていくように感じます。必ずいつか、誰かに返せる時が来るのだからこそ、そのお役目を忘れず、磨くことも忘れず、大切にご恩を送れる自分で居たいと思います。

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